【書評】グラフをつくる前に読む本(著: 松本健太郎)

仕事で資料を作成する時に、グラフをどの形式にしたら良いか迷ったことはありませんか?

棒グラフで表すべきか折れ線グラフで表すべきか、あまり考えずになんとなくで作ってしまってもグラフが入ることをそれっぽい資料ができた感じがなることがあります。

しかし、それぞれのグラフの役割や特性を理解することで、グラフの選択に迷いがなくなり、伝えたい意図が伝わるようになります。

今回紹介する本は、『グラフをつくる前に読む本[一瞬で伝わる表現はどのように生まれたのか]』は、そのための一冊となります。

◆目次
  1. 書籍の情報
  2. 著者の紹介
  3. 本の目次
  4. 本の要約ポイント
  5. 本の感想

[1] 書籍の情報

タイトル グラフをつくる前に読む本 [一瞬で伝わる表現はどのように生まれたのか]
著者 松本健太郎
出版社 技術評論社
出版日 2017/9/23
ISBN 978-4-7741-9219-2

[2] 著者の紹介

大阪府出身。龍谷大学法学部を卒業後にIT企業の株式会社ロックオン(株式会社イルグルム)に入社。

営業を経てエンジニア職となり、その後は会社に通いながら統計学を学ぶため、多摩大学大学院に通学し卒業。

その後は、株式会社デコム、株式会社JX通信社を経て、現在は株式会社グロースXで執行役員マーケティング責任者兼コンテンツ責任者として活躍、副業でデータやマーケティングに関するビジネス書も出版されています。

[3] 本の目次

第1章 グラフとデータ
第2章 棒グラフ
第3章 折れ線グラフ
第4章 円グラフ
第5章 レーダーチャート
第6章 ヒートマップ
第7章 散布図
第8章 積み上げグラフ
特別付録 データジャーナリズム入門

[4] 本の要約ポイント

■データを単にグラフィカルに表現だけではグラフにはならない

第1章ではデータの種類やグラフの表現方法について、分かりやすく説明してくれています。

グラフにするとは、データを単にグラフィカルに表現する方法を指すのではありません。自分の言いたい切り口でデータをグラフィカルに表現する方法を指します。


引用元:『グラフをつくる前に読む本』

「年収別2017年耐久消費財の普及率」のデータを、あえて表現方法として適していない折れ線グラフで表すことで、単に視覚化しても伝わりにくいということを気付かせてくれます。

■グラフの持つ特性や適切な使い方が分かる

棒グラフ、折れ線グラフなどのそれぞれグラフ特性を紹介する中で、印象的だったのは円グラフだけは安易に採用してはいけないと警告していたことです。

実は円グラフはデータ表現に用いてはならないと言われています。
円グラフの使用に反対する理由として、次の2つを挙げます。
○総量がわからないので違うグラフの内容と比較できない
○時系列データを用いた時間経過による内訳の推移を表現できない


引用元:『グラフをつくる前に読む本』

同時に上記のデメリットを解消する案も提示していて、総量の問題には「積み上げ棒グラフ」、時系列の問題には「面グラフ」を紹介しています。

■グラフの歴史が分かる

それぞれのグラフがどのようにどんな目的に誕生したのか、(古いものでは200年以上も前の)歴史書を調査して、著者の考察を踏まえながら読み解いていきます。

レーダーチャートは、この社会統計学の入門書である「社会生活における合法則性」に初登場します。
〜中略〜
レーダーチャートは円グラフと折れ線グラフが合わさったグラフとして、いくつかの見せ方の1つの中に登場します。


引用元:『グラフをつくる前に読む本』

[4]本の感想

本を読む前はグラフの特性の理解し、どんな所に気を配れば分かりやすいグラフができるのか、そういったことが記されている本だと思っていました。

読んだ後では、大きく違った点は、そのグラフはどのようなデータをどういう風に表現するために生まれたのか原点まで遡って、特性を解説したところです。

それぞれのグラフの歴史を紐解いていくので、実用書でありながら歴史書としても楽しめます。

一方でグラフの装飾やスタイルといった見栄えには、触れていませんでした。

まとめると、タイトルに偽りのない『グラフをつくる前に読む本』だと思います。
「グラフを使っているのに、伝えたいことが相手に上手く伝わらない!」という悩みを持っている方は、一度読んでみるとグラフの表現に自信がつくかも知れません。